中峰和尚座右の銘 現代語訳
ちゅうほう みんぽん ぜんじ
中峰明本 禅師
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中峰明本 禅師は
元という時代(1271~1368)を代表する
臨済宗の禅僧です
この中峰和尚座右の銘は
臨済宗の全国の専門道場や
お寺の朝課で
誦まれています
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中峰和尚座右の銘
末世の比丘
仏法が衰えた末の世の出家者は
形 沙門に似て
姿かたちこそ 僧侶に似てるが
心に 慚愧無く
恥じる心なく
※無慚:むざん・梵āhrīkya
身に法衣を着けて
僧侶の衣を身に着けながら
思い 俗塵に染む
思うのは 世俗の雑事ばかり
口に 経典を誦して
口では 経典を唱えながら
意に 貪欲を憶い
心に欲望・執着を思い浮かべている
昼は 名利に耽り
昼は
世間的な名声・現世的な利益に耽り
夜は 愛着に酔う
夜は
好きなモノを手放したくないと貪欲に酔う
外持戒を表し
外には
硬く戒めを守ると表明しながら
内密犯を為す
内では
密かに戒めを破っている
常に 世路を営んで
常に 世渡りの道を励み
永く 出離を忘ず
永い間
迷いの世界から離れ出て
悟りの境地に達することを
忘れている
偏に 妄想を執し
ひたすら 妄想に執着し
既に 正智を擲つ
既に 真実を捉える智慧を
投げ捨てている
一つには
道心堅固にして
須く見性を要すべし
一つには
悟りを求める意志を 固く持ち
(自己に備わる)
本性を見究められるように
求めるべきだ
二つには
話頭を疑着して
生鉄を咬むが如くせよ
二つには
公案を疑い 固執しろ
鉄を咬むように
三つには
長坐蒲団
脇席に着くること莫れ
三つには
座布団に長座して
脇席に着くな
四つには
常に仏祖の語を看て
常に自ら慚愧せよ
四つには
常にお釈迦様や祖師の語録を見て
常に 自らを恥じよ
五つには
戒体清浄にして
身心を穢すこと莫れ
五つには
受戒して得た善を実行する力は
清らかで汚れが無い
身体と心を 汚すな
六つには
威儀寂浄にして
暴乱を恣にすること莫れ
六つには
作法にかなう立ち振る舞いは
静かなものである
荒々しい振る舞いや勝手をするな
七つには
少語低声
戯笑を好むこと莫れ
七つには
言葉を少なくし 声をひそめよ
たわむれて笑うことを好むな
八つには
人の信ずるなしと雖も
人の謗りを受くること莫れ
八つには
人の信用が無いとしても
人から避難悪口を受けるな
九つには
常に苕箒を携えて
堂舎の塵を掃え
九つには
常にホウキを携え
寺の建物の塵を掃え
十には
道行倦むことなく
飽くまで飲食すること莫れ
十には
仏道の修行を 倦まずに続けよ
飽きるまでの飲み食いはするな
生死事大 光陰惜しむべし
生き死には大事なこと
時間を惜しむべきだ
無常迅速 時人を待たず
世の移り変わりは 極めて速い
時間は人を待たない
人身受け難し 今已に受く
人として生を受けることは
難しいことだが
今 すでに人として生を受けている
仏法聞き難し 今已に聞く
仏法を聞けるのは
難しいことだが
今 すでに仏法を聞いている
此の身 今生に 向って度せずんば
更にいずれの処に向ってか
此の身を度せん
(人として生を受け、仏教を聞いた)
この身体を
今、この世に(悟りの世界に)向って
渡らせなければ
更に 何処に向って
この身体を 渡らせようというのか
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明本禅師
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生年
1263.11.2. 銭塘(現在の浙江省 杭州市)
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没年
1323.8.14. 天目山(浙江省)
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俗姓は 孫
号は 幻住道人
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臨済宗 第十八世で
天目山 師子院の高峰原妙を師と仰ぎ
その印可を受けました
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高峰原妙 禅師は
中峰明本 禅師に
寺を継がせようとしましたが
明本禅師は 固辞
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他の僧に寺を継がせ
山を下りました
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度々
天目山を訪ねることはあったようです
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自らを「幻住」と称し
「幻住庵」と名づけた庵を
各地に構え
官寺の招きにも応じることも
寺に留まることも
ありませんでした
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中鋒禅師は多くの人々から
慕われ
多くの人々が集りました
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僧侶・俗人
中国人のみならず
西域・高麗・雲南
そして
日本の僧も参禅しました
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中峰明本 禅師に参禅した日本人僧
古先印元 遠渓祖雄 復庵宗己 無隠元晦
明叟斉哲 寂室元光 孤峰覚明
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元の皇帝
第4代アユルバルワダ(仁宗)
第5代シッディバーラ(英宗)
から尊崇され
仏慈円照広慧禅師という号を賜りました
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あまりに集まるため
密かに庵を去り 別の場所に移りますが
それでも集まるので
一ヶ所に 三年も留まれなかったそうです
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明本 禅師の生き方は
日本の禅僧にも影響しました
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京都や鎌倉といった都会から離れ
山間に 敢えて草庵を結び
庶民と共に禅を修める禅僧たちが現れます
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彼らは
中峰明本禅師(幻住道人)にちなみ
幻住派と呼ばれました
明石の禅寺 大蔵院
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